
宇宙ビジネスが盛り上がりをみせる中で、宇宙領域の事業で利益をあげる会社はまだ多くありません。多くの会社は、資金調達や他の事業の収益を投資して事業開発を進めています。
このシリーズでは、宇宙領域の事業で、利益がすでにある会社やもう少しで利益がでそうな会社にフォーカスして企業情報をお届けします。あなたが今後の宇宙市場をみたてるときに参考になれば嬉しいです。
今回ご紹介するのは、スペースノウ(SpaceKnow)という会社です。
スペースノウはAIを駆使した衛星データを提供する会社です。サービスには「金融向け」「政府向け」の2つがあります。
金融向け
銀行やヘッジファンドに情報を提供します。
政府機関
政府機関やNPOに向けて、環境の変化や防衛の側面から情報を提供しています。2018年には衛星データを使い中国の経済指数を算出して話題になりました。サードパーティのシステムに統合したりする企業にも情報を提供しているようです。
衛星データの分析をオーダーメイドで受けることもできます。ほかの企業とくらべて特徴的な点は、アプリケーションをひろく一般の方にも開放して自由に分析できる環境を提供しています。
サンプルとデモ動画があります。操作は比較的簡単にできました。
衛星画像の提供パートナーは下記になります。
DigitalGlobe/AIRBUS/planet/NASA/esa/urthecast
スペースノウは、衛星画像以外のデータとのつなぎ込みまでは対応していないようです。
サービス内容をまとめると、スペースノウは衛星データをAIである程度、自動的に知見を取り出せるシステムを提供する企業です。
ビジネスモデルを図にまとめます。

スペースノウのビジネスモデルだと、システムの利用者が活発に利用するかが鍵になりそうです。しかし、現在はまだ多くの利用者が、利用シーンを想像できてない状況でしょうか。
市場の成熟度合いを考えると、このビジネスモデルはタイミングが少し早すぎたのではないかと筆者は考えます。
創業メンバーにとってニューチャレンジな事業ドメイン
スペースノウは、2013年にパベル・マカレックとジェリー・ジャバーニッキが共同で創業しました。
パベルは、気候企業のリモートセンシング開発者で、今はなきモンサントに10億ドル以上売った経験があります。またハッブルやスピッツァー、ケプラー宇宙衛星と協力し、多くのNASAプロジェクトを管理していた人物。天体物理学の博士号も取得しています。
ジェリーは、過去にグローバルに何百万ものユーザーをもつIT会社を3社設立しました。トヨタ、PIXAR、イギリス軍などの企業との取引を成立させた人物です。
本社はサンフランシスコにあり、その他ニューヨークとプラハにオフィスがあります。社員数は50名未満と見られています。
調達に成功するも桁はあがらず
資金調達は過去に2回おこなっています。

調達額の合計は、545万ドル(約6億円)になりました。※1ドル110円で換算。
スペースノウの競合相手は、次のユニコーンのうわさもあるオービタルインサイトなどがあります。オービタルインサイトの調達額7870万ドルで、スペースノウとは額が1桁ちがい、差をつけられているのが現状です。
スペースノウの生き残こり戦略はあるか
スペースノウは、自社の強みがAIだったことで、他の業界でAI人材が人気になり給与が高騰し、資金を圧迫した可能性があります。
いまだ目立った売上もなく、2017年に調達した資金も2019年以内には底をつくころでしょう。スペースノウが起死回生の一手が打てるか、ピポットして次の調達を行うか、他社の傘下に入るか、売却するか。いずれにしろ大きな意思決定の日は近いと筆者は予想します。
参照元
https://www.spaceknow.com/
https://www.reflexcapital.com/founders/jerry-javornicky/
https://pitchbook.com/profiles/company/93637-81
https://www10.giscafe.com/nbc/articles/1/1483806/SPACEKNOW-Raises-%244-Million-Series-Funding
https://www.crunchbase.com/search/funding_rounds/field/organizations/num_funding_rounds/spaceknow
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/160328/mcb1603280500008-n1.htm
企業分析のリクエストがあればご連絡ください。
文:中原宏樹